WEB絵本『ディギーとダギーのトロッココースター』

  • WEB絵本『ディギーとダギーのトロッココースター』1/7 【1】
    「ああ、つかれた!」
    町の入り口に到着したストーブさんは、つかれてその場にすわりこんでしまいました。
    「遠いところおつかれさま。大変だったでしょう」
    出迎えにきてくれた、町長さんが言いました。

    ここは「ハートフルタウン」。ハートフルファームからいくつも山を越えたところにある、きれいな町です。ストーブさんは、ここの町長さんと友だちで、ときどきこの町にやってきては、得意の発明で町の乗り物を作ったり、修理したりしているのです。

    ハートフルタウンには、大きな学校や、警察や、消防署があります。おいしいレストランや花屋さんやクリーニング屋さんもあって、とても便利でステキな町です。でも、ハートフルファームからここまで来るためには、いくつもの山をぐるりとまわりこんで来なくてはなりません。
    にぎやかな町が大好きなストーブさんですが、この山越えの道にはいつもうんざりしていました。

    「せめてファームと町の間に、真っ直ぐの道があればよかったのにねえ」
    町長さんのその言葉を聞いたとき、ストーブさんの頭に、ひとつのアイディアがひらめきました。

    「じゃあ、ファームと町をあっという間に行き来できる、トンネルを作ればいいんじゃないですか?」
    「ええ?あの大きな山にトンネルを掘るんですか?」
    町長さんはびっくりしました。
  • WEB絵本『ディギーとダギーのトロッココースター』2/7 【2】
    思いつくと、すぐに実行にうつさずにはいられないストーブさん。ファームに戻ると、さっそくトンネル掘り名人の、モグラの“ディギー”と“ダギー”の兄弟を呼びました。

    ディギーとダギーは双子の兄弟なので見た目はそっくりなのですが、お兄さんのディギーが、なんでも「へいきへいき!」と引き受けてしまう明るい性格なのに対して、弟のダギーは、ちょっぴりあまのじゃくで、いつもお兄さんと反対のことを言いたがります。

    ストーブさんが、
    「やあ、ディギー、ダギー。あのでっかい山にトンネルを掘って、ファームと町をあっという間に行き来できるようにしたいんだけど、できるかな?」
    と聞いたときも、お兄さんのディギーはにこにこして、
    「へいきへいき!ぼくらが本気を出せば、どんな山だって、あっという間にトンネルができますよ!」
    と胸をはりましたが、弟のダギーは、
    「でもぼくらが本気を出さなかったら、いつまでたってもトンネルはできないけどね!」
    と、反対のことを言うのでした。

    そんな兄弟でしたが、トンネル掘りの腕は超一流です。トンネルを掘り始めてひと月もたったときには、もう立派なトンネルができて、そこには線路までしかれていました。
  • WEB絵本『ディギーとダギーのトロッココースター』3/7 【3】
    「こりゃすごい!この線路に鉄道を走らせればいいってわけだな!」
    と、よろこぶストーブさんに、ディギーが言いました。
    「ちがいますよ、これに乗っていくんですよ!」

    ディギーが指さしたのは、汚れてすすだらけになった、オンボロのトロッコでした。
    「ええ!こんなボロっちいトロッコで山の向こうまで行けるのかい?」
    ストーブさんはびっくりしましたが、ディギーはにこにこしたままこう言いました。
    「へいきへいき!けっこうこれで速いんですよ!」
    「でも、速いだけですぐこわれるかもしれないけどね!」
    ダギーが言いました。

    「さあ、しゅっぱつ、しんこーう!」
    ディギーとダギーと、ちょっと怖がっているストーブさんを乗せて、トロッコは、ガタゴトと線路の上を走り出しました。
  • WEB絵本『ディギーとダギーのトロッココースター』4/7 【4】
    「な、なんかガタガタゆれてるぞ?」
    ストーブさんが言うと、ディギーとダギーが答えます。
    「へいきへいき!ちょっとゆれてるだけですよ!」
    「でも、もっとゆれたらひっくり返っちゃうけどね!」

    だんだんトロッコのスピードが速くなってきました。
    「な、なんか、速すぎないか?あぶないぞ?」と、ストーブさん。
    「へいきへいき!ちょっと坂がきつくなっているだけですよ!」と、ディギー。
    「もっと坂がきつくなったら真っ逆さまだけどね!」と、ダギー。

    こんどはトンネルの中が真っ黒のすすで暗くなってきました。
    「何も見えない!ま、ま、まっくらだ!」
    「へいきへいき!ちょっとくらいだけですよ!」
    「このままずーっとまっくらかもね!」

    そして、トロッコは猛スピードでトンネルの中をかけぬけていきました。
    それからどれくらいトンネルの中を走ったでしょう、ストーブさんが怖くてもう泣き出しそうになったとき、

    「ああ!出口だ!」

    遠くに、小さな光が見えてきました。
    ところが、ストーブさんが笑顔になったのもつかの間、次の瞬間、すすで真っ黒だったストーブさんの顔は、真っ青になりました。

    「ええ!た、大変だ!せ、せ、線路がなくなってるじゃないか!!」

    なんと、トンネルの出口で、線路は終わっていたのです。
  • WEB絵本『ディギーとダギーのトロッココースター』5/7 【5】
    真っ黒のかたまりになったトロッコと3人は、ど───ん、と、猛スピードでトンネルから空高く、飛び出しました。

    「ぎゃあああ──!たすけてくれえ───!」
    ストーブさんは叫びました。

    「へいきへいき!」
    ディギーは言いました。

    「へいきじゃないかもしれないけどね!」
    ダギーは言いました。
  • WEB絵本『ディギーとダギーのトロッココースター』6/7 【6】
    ばっしゃ────ん!

    3人のトロッコが落ちたのは、ハートフルタウンの池の中でした。
    町の人は、とつぜん空から大きな黒いかたまりが落ちてきたので、びっくりして集まってきました。

    「なんだなんだ?」
    「いん石か?」
    「宇宙人の襲来じゃないか?」

    町の人のざわめきの中、池の水ですすが流されたストーブさんとディギーとダギーが、水の中から顔を出しました。
  • WEB絵本『ディギーとダギーのトロッココースター』7/7 【7】
    「ストーブさん?ストーブさんじゃないですか!どうしたんですか、こんなところで!」
    町長さんが、ストーブさんに気がついて声をあげました。

    しばらくぼうぜんとしていたストーブさんですが、水に浮かんだトロッコを見て、それからディギーとダギーを見て、最後に町長さんの顔を見ると、にこっと笑ってこう言いました。

    「へいきへいき!あっという間についちゃいましたよ!」

    それを聞いたディギーとダギーも、にこっと笑って、声をそろえてこう言いました。

    「ちょっとだけ怖かったかもしれないけどね!」


    おしまい
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