【1】
朝6時1分前。ホルンさんは今朝も、いつもどおりに目をさまします。
「モウ~朝かぁ」
ホルンさんがおふとんから出たしゅんかん、つまり6時ちょうどに外で一番ドリがなき始めました。
「コケコッコー!」
「やあおはよう、ニワトリさん。」
いつもどおりにニワトリさんにあいさつすると、
いつもどおりにパジャマを着がえ、
いつもどおりにサンドイッチを食べ、
いつもどおりにミルクを飲み、
いつもどおりに歯をみがくと、
いつもどおりに時間どおりに家を出ました。
「いい天気だなあ。今日もいつもどおり《最高の一日》になりますように!」
【2】
「おはよう、ホルンさん!」「おはようー!」
学校へむかう子ヒツジたちが、いつもどおりにホルンさんの横をあいさつしながらかけぬけていきます。
「やあおはよう。みんな今日も元気だね!」
ホルンさんは、いつもどおりに、時間ぴったりに駅につきました。
ここが、ホルンさんの職場。そう、ホルンさんは、ハートフルファーム駅の駅長さんなのです。
ホルンさんが駅の改札に立つと、すぐに、今日最初のお客さんがやってきました。
「おはようございます」
いつも一番に駅に現れて一番列車に乗って出かけていくこの女性は、街のチーズ屋さんで働く、エマさんです。
「お、おはようございます!モ、モウ~間もなく列車が到着します!」
ホルンさんは、緊張気味に答えました。そして思いました。
(なんて、笑顔のすてきな人なんだろう。もし、こんなすてきな人が毎朝ぼくのサンドイッチを作ってくれたなら、それこそ《最高の一日》がずーっと続くのになあ…)
【3】
何でも「いつもどおり」に行動するホルンさん。
ところが、この日は一つだけ、いつもどおりにいかないことがありました。
なんと、いつもの時間になっても、一番列車が到着しなかったのです!
ホルンさんは、心配になってきました。
だって、今まで一度だって、一番列車が遅れたことなんてなかったんですから。
「困ったわ。仕事におくれちゃう」
エマさんもちょっと弱ったようすです。
(どうしよう。これは一大事だ。《最高の一日》どころか、今までにない《最低の一日》になってしまうかも…)
ホルンさんは心配で心配で、とうとう線路を走り出してしまいました。
「モウ~待ち切れない!ちょっとようすを見てきます!」
【4】
しばらくホルンさんが走っていくと、モーモータウンの川にかかる鉄橋の手前で、列車はなぜか止まっていました。
「あんなところに止まっているぞ!一体どうしたことだ?」
すると… 小さな小さなカメの赤ちゃんたちが、一列になって、ゆっくりゆっくり、線路を渡っているではありませんか!
「ごめんなさいね。すぐに渡ってしまいますから」
お母さんカメのタトリーヌさんが申し訳なさそうに言いました。
でも、赤ちゃんカメたちは、あいかわらずのよちよち足で、ゆっくりゆっくり、線路をよこぎっていきます。
そのようすを見て、ホルンさんは思わず微笑んでしまいました。
「いやいや、だいじょうぶですよ、タトリーヌさん。それより子供たち、モウお出かけできるようになったんですね!よかったなぁ!」
【5】
「どうもありがとう、ホルンさん!」
ようやく線路を渡り終えたタトリーヌさんと赤ちゃんカメに見送られながら、列車はハートフルファーム駅に向かって出発しました。
「やあ、きたぞ!」
「よかった!事故じゃなかったんだね!」
駅では、おおぜいの人たちが列車を待っていました。
「皆さん、モウしわけございません!」
ホルンさんがいっしょうけんめい遅れたわけを説明すると、
「なあんだ、そういうことならしかたがない!」
「タトリーヌさんの赤ちゃん、歩けるようになったんだね!」 「よかったなあ!」
待っていた人たちにも笑顔が広がりました。
「それでは!大変お待たせいたしました。本日の一番列車、発車します!」
ようやく発車した一番列車を見送ったら、
ホルンさんのおなかがぐううぅ~と音を立てました。
朝からいっぱい走り回ったせいで、ホルンさんははらペコだったのです。
すると、
「よかったら、これ、どうぞ」
背後から声がしました。
【6】
それは、エマさんの声でした。
「お店のみんなと食べようと思って、たくさん作ったんです。いつもいつも、時間どおりに列車を走らせてくれているお礼に、よかったら食べてくださいな」
渡されたバスケットの中に入っていたのは、サンドイッチでした。
エマさんのお店で作っている、おいしいおいしいチーズがいっぱい入った、サンドイッチ。
口いっぱいにほおばりながら、ホルンさんは思いました。
「いつもどおり」じゃなかったけれど、
今日はいつも以上に、そりゃモウ《最高の一日》だな!
おしまい
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